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会議する医師

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DOCTOR INTERVIEW

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人生のターニングポイント

開業医インタビュー

河原 直親

TADACHIKA KAWAHARA

医療法人社団 奏愛会 
​横浜つづきクリニック / 院長

杏林大学医学部卒業

杏林大学付属病院 第一外科

都立荏原病院 外科

東京逓信病院(消化器) 外科

調布病院 消化器外科

信愛クリニック 非常勤

横浜つづきクリニック 内視鏡内科 心療内科 内科

河原院長

私は信愛クリニック勤務を経て、2020年7月、横浜市都筑区に「横浜つづきクリニック」の院長に就任しました。

横浜つづきクリニックは信愛クリニックの分院にはなりますが、事業計画書からクリニックの図面やデザイン、スタッフの人数に至るまで、すべてを私に任せてもらえたので、もはや自分のクリニックという感覚で日々楽しく働いています。

私のクリニックでは心と身体を同時に診る外来診療と、苦しくない内視鏡検査の2つを軸としています。これは信愛クリニックで培ってきたものを大いに利用しており、おかげさまでクリニックは完全に軌道に乗り、心療新患に至っては予約がいつもすぐに一杯になってしまい、河原はここ数年は新患を取らずに再診患者さんだけを診ている状態です。今は河原の他にも医師を雇用し2人体制で外来診察を行っています。

今でこそ診療の中心は心療内科であり、日々夢中になって心療内科を行っていますが、信愛クリニックに勤めるまでは、心療内科をやったこともなければ、やるつもりもありませんでした。信愛クリニックに勤めた数年間で、私は大きく変容したのです。

数年前の私は、開業を目指し、スキルアップのために複数のクリニックに勤務するために某求人サイトに登録していました。エージェントから「ちょっと遠いのですが、将来開業を考えているのであれば、ニーズに合いそうなクリニックがあります」と紹介されたのが信愛クリニックでした。私の家は青葉区ですから、大船にある信愛クリニックは確かに遠く、当初は真剣には考えていませんでした。しかし信愛クリニックのオフィシャルサイトをみて、内視鏡の件数が多い事と、開業応援塾など現理事長(当時の院長)がユニークなことをしているのに興味を覚えて応募しました。

面接を経て内視鏡のトライアルを行った際に、理事長の内視鏡テクニックを始めて目にしました。上部も下部も非常に丁寧かつスマートで、ほぼ鎮静ゼロの状態で痛くも苦しくもない内視鏡を行うテクニックを見て、純粋にこれはすごいと思いました。

当時の私は無送気の下部内視鏡挿入法に夢中になっているところだったのですが、内視鏡のトライアルを行う私のすぐ後ろに、背後霊のように立った井出先生の指示通りに挿入を行った結果、驚くほどスムースに無送気の内視鏡を行えたのです。ここで勤務したら短時間で内視鏡のスキルアップができることを確信した私は、その時既に採用が決まっていた他のクリニックを断ろうと決めました。幸い井出先生にも私の熱意は伝わったようで、その日のうちに採用の返答をいただきました。

そしてその面接のときに、井出先生が開業する医師の教育をライフワークとしていることを知りました。そこで井出先生から、「開業を考えているのであれば、心療内科を知っておいて損はない」と言われ、「興味があるなら教えます」と言われ、その流れから心療内科を始めることになったのです。それが私と心療内科の出会いであり、今思えば、あの日が私の人生のターニングポイントだったのです。

信愛クリニックでの勤務が始まりました。内視鏡は井出先生が行っているところを見学できました。それもただの見学ではなく、実況中継付きの見学です。上部内視鏡挿入時のコツ、大腸内視鏡挿入のゴールデンスタンダードの道筋。毎日覚えることがあり、そして徐々にスキルアップしていく自分を感じられて、日々充実していました。何よりも、それまで他の病院で内視鏡を受けて苦しい思いをして来た患者様たちが、「どうしてこんなに楽なの?」と言って感謝してくれるのが、とても喜ばしかったのです。そして、信愛クリニックでの数年間で、最も私を大きく変えてくれたのが、心療内科です。それまでの私はもちろん、心療内科の経験は全くありませんでした。それどころか心療内科的な患者様を避けていました。心療内科的な治療が必要な患者様が一般外来にたくさんいることは感じていましたが、新しいことに手を出して覚える自信がなかったですし、心療内科を始めたら、診察に長い時間を取られてしまって大変なのではないかと思っていました。

しかし、開業するときに心療内科を取り入れるかどうかは自分が決めることですから、自分に合わなければ将来やらなければいい事ですし、せっかくだから覚えておこうと思って始めました。私が診た初めての患者様は、抑うつの強い女性でした。

1時間ほどかけて問診をなんとか取り、その後院長セッションです。その時点ではPIPCの本を1冊読んだのみで、ほとんど心療内科の知識はありませんでしたが、何も知らない私にも良く分かる解説でした。それから勤務するごとに1人か2人ずつ心療内科を診ていきました。さすがに何の知識もないまま患者様に話をしていくのは抵抗があったので、院長室にあった岡田尊司先生の一般向けの本を何冊か借りて読んだのですが、実際に患者様を診始めたその頃に読んだそれらの本は非常に興味深く、みるみる吸収できました。心療新患数の増加とともに、井出先生のセッションも段階を経て徐々に高度になっていき、診ていく疾患も多様になっていったのです。

そして、ある時に気が付いたのです。初診時には表情も暗く、緊張で硬くなっていて、とにかく辛そうに見えた患者様たちが、診察を重ねるごとに、徐々に表情を変えていったのです。本当に徐々にですが、表情は明るくなっていき、診察室ではリラックスして話し、体調までが改善して元気になっていったのです。この感覚は身体内科とは異なりました。

心療内科では、養育歴からプライベート、仕事の悩みなどの人生相談までも共有しているため患者様との距離が近く、その分患者様が改善していく過程が非常に喜ばしく感じられるのです。そして患者様の「ありがとう」の言葉を建前ではなく、心からの言葉として聞くことができたのです。

そしてもう一つ気が付いたことは、自分の診療域が大幅に広がっていたことです。診察に心療内科を取り入れて心と身体を同時に診るようになると、解決できる問題が非常に増えたのです。身体の不調を訴えてきた患者様の話を、少し傾聴して丁寧に診察することで、こんなにも良くなるものかと驚かされました。

このようにして私は心療内科に夢中になっていったのです。心療内科の患者様たちは、みな優しさを求めていて、自分のために一生懸命になってくれる誰かが必要なのだと実感しました。すると自分の目の前の患者様を何とか助けたいという気持ちが強くなり、自然と親身で親切な診察を心がけるようになったのです。

2019年の秋に「横浜つづきクリニック」の開業の話が目の前に舞い降りてきました。信愛クリニックの院長が塾長である「開業応援塾」には、それまでに何度も出席していましたが、開業が決まってからは外来の合間に個人的に詳しく教わりました。マーケティングや会計、人事採用からリーダーシップに至るまで、実に分かりやすく、しかも楽しく教えてもらい、だんだん開業が現実味を帯びていったのです。そして開業を果たして1年が経つ現在も、井出先生からの学びを続けています。

信愛クリニックに来る前と今とでは、診察のスタイルが大きく変わりました。我ながら、数年でこんなにも変われるものかと思うほどです。内視鏡を学び、心療内科を学び、開業のノウハウも学びました。実にいろいろなことを教わりましたが、学んだものの中で最も大きなものは、「患者様に対して親身に親切にすること」の本当の意味だったのだと思います。

親身で親切にしていくだけで、どんどん元気になる患者様がいます。そして医師に冷たくされることで病状を悪化させる患者様がいます。

患者様が良くなっていくことが、こんなにも喜ばしい事だと気が付けたのも、心療内科を知ったからです。今こうしてクリニックの院長をしているのも、自分が変われたからできたことであり、変わる前の自分ではうまくいかなかったと思います。

大きく自分を変えてくれた信愛クリニックとの出会いという運命に、感謝しています。

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